株式会社ふらここ
代表取締役 原 英洋

1963年東京都生まれ。祖父は人間国宝の人形師、母は女流人形作家であり、代々人形師の家系で育つ。
慶応大学経済学部卒業後、出版社に就職し、2年間勤務。 父の他界を機に、人形の製造販売会社を継承。
母と二人三脚で経営に携わり、2008年に株式会社ふらここを設立。雛人形・五月人形の製造販売を行う。

原社長は、もともと起業をしようと考えていたのでしょうか?

いいえ、全く考えていなかったです。私は祖父の代から続く人形工房を営む家庭に育ちました。当初家業を継ぐつもりはなかったので、大学卒業後に、出版社へ就職しました。
しかし、就職から2年後に父が他界したことがきっかけで、家業を継ぐことになりました。いざ人形業界に入って感じたのは、伝統産業の旧態依然とした体質に対する危機感でした。

具体的にどのような危機感だったんでしょうか?

このままでは、日本の伝統である雛人形はいずれ消えてしまうのではないかと感じました。
人形業界では作り手と売り手は分業であり、お客様の声が作り手である職人へ届き辛い状態だったのです。
職人が良いと思って作った雛人形は、お客様のニーズを考慮していないため、売れ残ってしまいます。そうすると販売店同士で値引き競争が起こり、職人の体力はすり減り、叩き売りが行われ、職人の後継者不足となり、業界全体が疲弊してしまっていたんです。
昔ながらの販売方法を守る中で、時代のニーズから取り残されている状況でした。

日本の伝統産業を守るために起業を決意したのですか?

そうですね。お客様が望む雛人形を作ることで、改めて日本の伝統の良さを世に広め、伝統を守っていきたいと思いました。
実際に販売の現場に立って感じたこととしては、「かわいい人形が欲しい」、「着物は明るい色が良い」など、お客様が反応を示すのは一部の商品でした。そして、そのお客様の特徴としては、若いお母様が多かったんです。
昔は、雛人形はお祖父様、お祖母様が、孫が生まれた時に贈るギフト商品でした。「いかに背丈が高いもの」を示すことが、その時代の流行だったんですね。
それが現在では、若いお母様が雛人形のデザインを選び、お祖父様、お祖母様がスポンサーとしてお金を出すことが増えました。
買い手は変わりましたし、だからこそ、よりコンパクトなものが好まれるようになりましたので、我々もそのニーズに応えていかなければならないと思ったんです。

商品を変えることで、苦労したことなどはありますか?

我々は、お客様の声をもとに「赤ちゃんのかわいらしい顔」を作ってほしいと職人に依頼しましたが、初めはとても抵抗を受けました。
職人は顔の造形が深いものを制作することにやりがいを持っていますので、赤ちゃんのようにのっぺりしていて、卵に目をつけるくらいの特徴をオーダーしたところ、「顔じゃなくなってしまう・・」と言われることもありましたね(笑)。
そこから、試作を何度も繰り返しながら、完成までに1年くらいかかりました。でも、最終的には職人からも「かわいいものになったよ」と言っていただき、これは大丈夫だな、と確信しました。

それが今では、貴社の主力商品となっているのですね。

そうですね、おかげさまで初年度から完売することが出来ました。
このように、人形のデザイン、企画、製造、販売まで100%ワンストップで、完全オリジナルでつくっているのは日本でも弊社だけではないでしょうか。
今では、毎年120%の業績で、予約して1年待って下さる方もいるんです。

今後ますます拡大を目指していることかと思いますが、どのような方と一緒に働いていきたいですか?

自立的で主体性のある方です。弊社ではスキルは一切問わず、人物重視です。
スキルは後から学べることができると思いますが、仕事に取り組む姿勢や人間性というのはこれまでの人生で身に着けてきたものですので、なかなか教え込むのが難しいと思っています。
弊社も今後拡大をしていくにあたり、新しいものをつくっていきたいと考えています。そういった時に、「まずやってみる」という精神で、当事者意識を持って自主的に動ける方を求めています。

今後は、どのような取り組みを考えていますか?

今年もおかげさまで節句人形を完売することが出来ましたが、購入出来なかったお客様から、すでに来年の予約を頂いている状況ですので、まずは組織拡大をし、国内での需要に応えることです。
ただ、自社の利益追求だけではく、社員の幸せの実現、お客様に喜んでもらうこと、また職人の生活を維持しながらも向上するようにお付き合いさせていただくこと。そして最終的には社会に貢献していくことですね。
伝統があって、成立する文化だと考えていますので、伝統を継承し、文化を継続させていきたいと思います。

原社長にとっての「文化」とは何でしょうか?

「人が生活する上で精神的な安定を得るために非常に必要なもの」だと考えます。我々が日本人としてのアイデンティティを保っていくためにも、重要なことだと思っています。
1000年続く文化をもっているのは日本だけだと思うんですよね。その時代に生きてきた人たちが、その時代にあったものをカタチを変えながらつくってきたから、今があると思っています。文化は、そのように続いていくものだと思っていますし、それを継続させていくのは我々の使命だと思っています。